東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)92号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(取消理由の有無について)
二 原告は、本件審決は、……判断を誤つたものである旨主張するが、原告の右主張は、理由がないものというほかはない。すなわち、原告は、本願発明において、一本の軸上に刻設される左ねじ及び右ねじのピッチに大小の差異を設けた点について、本願発明は、これにより、すぐれたゆるみ止めの効果を挙げうるものであり、したがつて、これをもつて引用例のものと単なる設計上の差異があるにすぎないとした本件審決の判断は誤りである旨主張するが、当事者間に争いのない本願発明の要旨にみられる構造自体及び<書証>の記載によれば、本願発明における原告主張のすぐれたゆるみ止めの効果は、左右のねじを一本の軸上に形成し、これにそれぞれ相応する二つのナットを嵌合させ、両ナットがその間の摩擦力によつて運動回転し、一方のナットがゆるみ方向に回転すれば他方のナットが締付け方向に回転するようにしたことにより生ずるものとみるのが相当であり、ピッチの大小によりねじのゆるみ方に相違があることは容易に推認しうるところではあつても、本願発明の前記構造において左右のねじのピッチを異にしたことがゆるみ止めのための役割を果しているものとは到底考えられず、原告主張のように、本件発明のものが、その左右のねじのピッチを同一にしたものに比し、著しいゆるみ止めの作用効果を有する事実を認めるに足る証拠はない。しかも、一般にねじのピッチを目的に応じてどのように決定するかが単なる設計上の問題であることはいうまでもないところ、一本の軸上にピッチを異にする二つのねじを刻設することにより、ボルト、ナットのゆるみ止めの作用効果を上げるという技術思想が、本願出願前すでに公知であつたことが明らかな本件においては、本願発明における前記の点は、引用例のものと比較した場合、単なる設計変更の域を出ないものとすることは、あながち誤りということはできない。また、座金の点にしても、引用例のものにおける座金は、被告も主張するとおり、他の構造(一本の軸上に左ねじ及び右ねじを重ね合せて切ること)により達成されるゆるみ止めの効果をさらに一層効果あらしめるものにすぎないから、この点に関する本願発明の技術思想を引用例のそれに包含されるものと判断することも、これはまた誤りと断ずることはできない。
(むすび)
叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)